飛鳥時代に遡る阿部氏(安倍氏)の氏寺

「華厳宗総本山東大寺」の別格本山としての高い格式を誇る安倍文殊院は、645年に阿倍一族の氏寺として建立されました。奈良時代には、遣唐使・阿倍仲麻呂が出ています。平安時代から安倍氏と名乗るようになり、後裔に陰陽師(おんみょうじ)の安倍晴明が出ています。

安倍文殊院 浮見堂と桜景観(Photo by Miro Ito)
安倍文殊院 本堂前の能舞台越しの桜景観(Photo by Miro Ito)

阿部(安倍)寺跡

『日本書紀』によれば、第8代孝元天皇の子孫(皇別氏族)され、飛鳥時代の阿部(安倍)寺跡は、阿部一族の本拠地とされています。1970年に史跡公園として塔跡、金堂跡、回廊跡の 一部の基壇が復原整備されています。

『東大寺要録』(12世紀初期の東大寺関係の記録)によれば崇敬寺(そうきょうじ)とも称され、大化の改新の時の左大臣、安倍倉梯麻呂(あべのくらはしまろ)の建立と記録されています。

鎌倉時代の火災により、現在の安倍文殊院の地に移されました。

安倍文殊院 文殊お会式(撮影協力:安倍文殊院 Photo by Miro Ito)

文殊お会式

安倍文殊院では、毎年3月25日と26日、年間最大の行事である「文殊お会式」が執り行われています。

本尊は、鎌倉時代に東大寺大仏の再興事業を起こした重源上人構想による「木造騎獅文殊菩薩及脇侍像(海渡文殊群像)」です。

中国五台山信仰をテーマにした5躯の群像で、文殊の気品溢れる凜とした表情には、崇高美を得意とした快慶作風が見事に結実しています。

木彫極彩色の文殊騎獅像は、高さが約7mあり、日本一大きな像として、切戸文殊(京都府)・亀岡文殊(山形県)とともに、日本三大文殊に挙げられています。

安倍文殊院 文殊お会式(撮影協力:安倍文殊院 Photo by Miro Ito)
参拝者の頭に智恵袋を当てる加持祈祷。本堂前「智恵のお授け所」にて(撮影協力:安倍文殊院 Photo by Miro Ito)

華厳経と文殊菩薩

文殊菩薩(mañjuśrī・マンジュシュリー)は、深い智慧=般若(paññā・パンニャー)を司る菩薩として知られています。

般若経典においては、釈尊の代わりに、般若の「空(くう)」を説き、『華厳経(Gandavyūha Sūtra・ガンダヴィユーハ・スートラ)』では、善財童子の悟りを求めた旅へ誘う師となりました。

『華厳経』の「入法界品(にゅうほっかいほん)」において、文殊菩薩は、祇園精舍の聴衆を前にした釈尊が師子奮迅三昧(ししふんじんざんまい)に入り、精舍を仏の智慧の世界に変えたことから、その智慧に促されて、ブッダガヤに旅立ちました。

そこで悟りを求めた善財童子に出会い、五十三人の善知識(良き師)を歴訪するよう励まし、最初の師となりました。最後には、普賢菩薩のもとで、悟りに至る、善財童子の仏法求道の物語が描かれています。

安倍文殊院案内
名称 安倍文殊院
所在地 〒633-0054 桜井市阿部645
TEL/FAX 0744-43-0002 / 0744-46-3000
URL http://www.abemonjuin.or.jp/
宗派 華厳宗
拝観時間 09:00~17:00
休日 年中無休
拝観料 大人(中学生以上) 700円、小学生 500円
菓子・抹茶付き
障がい者施設 :身障者用トイレ有り

(※出典:奈良県観光公式サイト)

(※「安倍文殊院」についてのテキストならびに写真は、2022年10月30日奈良県 万葉文化館でのMIROITO講演「はじまりの聖地  大和四寺物語〜花・仏像・行事めぐり」をまとめ直したものです。)