飛鳥における珠玉の文化遺産を総合展示

飛鳥資料館は、古代国家誕生の地である「飛鳥」の歴史と文化を紹介する資料館です。飛鳥では、592年に推古天皇が豊浦宮に即位してから、694年に藤原京に遷都するまでの約100年間、何代もの天皇の宮が営まれ、首都として繁栄しました。同資料館は、文化財の調査・研究機関である奈良文化財研究所の展示施設として、1975年に開設されました。

高松塚古墳出土 海獣葡萄鏡  重要文化財 8世紀初め頃 ©︎奈良文化財研究所 飛鳥資料館(Photo by Miro Ito)

 唐の長安から伝来した海獣葡萄鏡

高松塚古墳(特別史跡、8世紀初め)出土の海獣葡萄鏡は、中国長安(西安市)の698年に亡くなった独孤思貞(どっこしてい)の墓から、同じ型から作られた鏡が発見されたことから、702年の遣唐使が帰国した704年に、日本に伝えられたと考えられています。

高松塚古墳の被葬者は、この年代と同副葬品である銀装の刀葬具から、文献に残された人物から推測するならば、天武天皇の皇子・忍壁(おさかべ)の皇子である可能性が高いと考えられています(1)

註(1) 『律令国家前夜 遺跡から探る飛鳥時代の大変革』(前園実知雄著、新泉社、2022年)

高松塚古墳出土品   重要文化財 8世紀初め頃 © 奈良文化財研究所 飛鳥資料館 (Photo by Miro Ito)

飾金具の用途解明により棺を復原

高松塚古墳では、1972年の壁画発見の際に、棺用の飾金具(かざりかなぐ)15点が発掘されました。2022年に発掘50周年を迎え、奈良県立橿原考古学研究所と奈良文化財研究所との合同研究により、金銅製の透彫金具と六花形(ろっかがた)金具は外面に飾られたことが判明し、木製の棺が復原されました。

花弁文(六花形・八花形など)金具を中心とする棺飾金具は、斉明天皇と間人皇女との合葬陵であると考えられる牽牛子塚古墳(けんごしづかこふん)からも出土しています。この復原は、終末期古墳(7世紀から8世紀初め)の棺の構造や外観、金具の使用方法を解明する上で重要な成果となりました。

川原寺裏山遺跡出土 天部腰部 明日香村教育委員会所蔵 (Photo by Miro Ito)
川原寺裏山遺跡出土 方形三尊塼仏  明日香村教育員会所蔵(Photo by Miro Ito)

川原寺裏山遺跡出土の塑像群

川原寺(かわらでら)は、藤原京では大官大寺、飛鳥寺とともに、官立の三大寺に挙げられた大寺でした。天智天皇(在位668-672年)によって、母・斉明天皇(皇極天皇の重祚)のもがり(殯)が行われた旧川原宮に造営されたと考えられ、天武天皇(在位673-686年)によって整備されました。

鎌倉時代に焼失した後、仏像群が寺西北の山裾に埋められて、その遺跡「川原寺裏山遺跡」からは、7世紀後半まで遡る、千数百点に及ぶ方形塼仏(2)や数百点に上る大小の塑像の破片が発掘されました。シルクロードの仏教東伝の物語をいまに伝える、夥しい数の仏像は、像容は不明ながら、如来、菩薩、天部、四天王をはじめとする丈六像から小像まで見られます。

 

白鳳期の荘厳を象徴 川原寺塼仏

川原寺の方形三尊塼仏は、堂塔内壁面に並んで飾られていたと考えられています。定印を結ぶ中央の如来は、蓮華座に足をのせて倚座(いざ)し、頭に二重円光を負っています。背景には菩提樹、上部には、火焔を乗せた天蓋の左右を飛天が囲む構図です。左右には合掌する菩薩像が配された塼面で、橘寺三尊塼仏も、この同じ型から作られています。

 

註(2) 塼仏とは、塼(煉瓦れんが)に仏像を浮き彫り状に焼き込んだ粘土板。中国六朝から唐代にかけて流行し、白鳳期に招来されました。型を使って大量生産され、堂塔内部の壁面や仏像の台座にはめ込まれ、仏教の荘厳を表しました。

※参考文献『飛鳥・藤原京展ー古代律令国家の創造ー』(奈良文化財研究所・朝日新聞社、2002年)

石神遺跡 石造須弥山 重要文化財 7世紀半ば頃 東京国立博物館所蔵 © 奈良文化財研究所 (Photo by Miro Ito)
須弥山石の噴水構造(飛鳥資料館の展示より)

飛鳥京の迎賓空間 石神遺跡

飛鳥京の迎賓空間であった石神(いしがみ)遺跡では、斉明天皇(在位655-661年)の時代からの石造りの噴水施設が、シルクロード諸国との交流を物語っています。古代インド発祥の宇宙の中心を象った須弥山石や、中央アジアの遊牧民を思わせる石人像が発見されています。須弥山石や石人像(重要文化財、国立東京博物館所蔵)は、飛鳥資料館に常設展示されています。

 

須弥山 噴水構造の庭園石

須弥山(スメール)は、古代インドの世界観において、高さ56万キロ、33人の天神が住む、世界の中心の山のことです。「飛鳥の迎賓館」と呼ばれた石神遺跡から1902年に発掘されました。仏舎利に似た、噴水構造の庭園石と考えられ、蝦夷や吐火羅(トハラ)人が来た時に、石神にてもてなしたといわれています。

石神遺跡 石造男女像 重要文化財 7世紀半ば頃 東京国立博物館所蔵 © 奈良文化財研究所 (Photo by Miro Ito)

シルクロードの交流史を物語る石人像

石造男女像(石人像)は、花崗岩を作った庭園用の噴水用石造物で、須弥山石と同じ石神遺跡で1903年に発掘されました。岩に腰掛けた男性像に女性像が手を添え、内部に孔(孔)が貫通し、男の口の杯と女の口から水が吹き出す仕組みです。

モデルとして考えられる、中央アジアの遊牧民の吐火羅(トハラ)人は、ギリシア人からバクトリア地方を奪ったスキタイ系遊牧諸族で、西域トハリスタン(大夏国)を築いたといわれます。

奈良文化財研究所 飛鳥資料館 利用案内
施設名 奈良文化財研究所 飛鳥資料館
所在地 〒634-0102 高市郡明日香村奥山601
TEL/FAX 0744-54-3561/0744-54-3563
URL http://www.nabunken.go.jp/asuka/
営業時間 9:00~16:30(入館は16:00まで)
休日 月曜日(祝日の場合は翌平日)
※12月26日~1月3日
料金 一般…350円
大学生…200円
70歳以上…無料
高校生および18歳未満…無料