元興寺 地蔵会万灯供養

「南都には地蔵の霊言あまたおわします」(中世の仏教説話『沙石集』)

元興寺 地蔵会万灯供養(撮影協力:元興寺 Photo by Miro Ito)

母なる大地と子宮を表す地蔵菩薩

日本最古の寺、元興寺では、8月23日と24日の盂蘭盆の日、地蔵会(じぞうえ)といわれる地蔵盆が開催されます。地蔵は、もともと菩薩の一種ですが、「梵語『キンチ・ガルバ』の漢訳で、本来は大地と子宮を表している」(辻村泰善住職)といわれます。文字から見て、虚空蔵菩薩の「空」と対極をなし、母なる「地」を意味ずるそうです。

元興寺 地蔵会万灯供養(撮影協力:元興寺 Photo by Miro Ito)

春日信仰による地蔵信仰の浸透

南都では、古くから多くの地蔵尊が遺されているのは、神仏習合の歴史と関係しています。春日大社の第三神、天児屋根命(アメノコヤネノミコト)の「本地(仏教的な性格)」(1)が地蔵菩薩の本願であるとの思想「本地垂迹説(ほんじすいじゃくせつ)」が大元にあります。

註−1本地垂迹説(ほんじすいじゃくせつ)とは、神仏習合の思想の一つ。聖武天応の時代に遡り、平安時代ひ成立し、多くの祭神の「本地仏(仏教的な性格)」を特定するようになった。明治時代の神仏分離政策によって、否定された。

元興寺 地蔵会万灯供養(撮影協力:元興寺 Photo by Miro Ito)

冥界に行くものを救う

平安末期以降は、死者が冥土で閻魔から苦しめられる末法思想が、貴族の間で流行し、地蔵尊は「境の神=宿神(シャクジ)」として、冥界に行くものを救う存在押して、信仰を集めたといわれます。シャクジとは、あの世との境に立つ将軍「賽神(サエノカミ)」のことで、地蔵尊はまた「道祖神」とも習合していきました。

元興寺 地蔵会万灯供養(撮影協力:元興寺 Photo by Miro Ito)

先祖と地蔵のぬくもりを感じさせる灯明

元興寺では、辻村住職によると、古くから千体地蔵や板地蔵・印仏地蔵があり、五輪塔に地蔵尊を掘るものから、石造の阿弥陀・地蔵並置仏まで、数多くのお地蔵さまが遺されています。これらの無数の石仏や石塔を集め、境内南庭に並べて供養し始めたのが、地蔵盆万灯供養会の始まりです。

「灯明は見えないものを照らし出し、あやうい炎は、先祖と地蔵のぬくもりを感じさせてくれます」(辻村住職)

元興寺 地蔵会万灯供養(撮影協力:元興寺 Photo by Miro Ito)

万物五行の恵みを一つの行事に凝縮

この行事の魅力は、「地」を表す地蔵尊に、油(液体=水)をエネルギーにして火が灯され、火は空気を素にして風の力で燃え立ちます。そして灯芯には藺草(木)が使われ、まさに万物五元素の恵みを、ひとつの行事の中に凝縮させていることです。

灯明皿も地元の人々が手作りでこしらえ、灯芯を寄進する人、油を注ぐ地域の人が集まり、子供たちのための行事も行なわれ、「まつり」と「供養」が一体となった賑わいを見せています。

元興寺 地蔵会万灯供養(撮影協力:元興寺 Photo by Miro Ito)

地元の信仰に支えられてきた奈良仏教のもう一つの側面

小さな地蔵尊への想いは、もとより弱者への愛であると同時に、小さなものへの分け隔てのない愛という、仏教の教えそのものです。官立だけではない、地元の人々の信仰に支えられてきた奈良仏教のもう一つの大切な物語が見出せる、手作りの癒される行事です。

行事案内
開催名 地蔵会万灯供養
開催期間 8月23()24()
17:00
21:00
開催場所 元興寺
お問合わせ先 0742-23-1377 (元興寺)
料金 無料
開催スケジュール ◎本堂、極楽堂(国宝)
 ・法要(地蔵尊供養)両日間 17:00
 ・行燈絵献灯(各界知名士による奉納)
◎禅室(国宝)
 ・筝曲奉納演奏 8/24 18:0020:30◎境内
 ・水塔婆供養(境内にて)両日18時~
 ・献燈供養(祈願を墨書した灯明皿を夕刻に両日点燈する)
 ・模擬店と子供のひろば 8/23 18:00
 ・まんぷく供養(若手料理人の屋台料理販売)8/24 11:0016:00
※駐車場は有りますが、当日と前後日(準備と片付け)は使用不可

(※出典:奈良県観光公式サイト)

元興寺案内
施設名 元興寺
所在地 630-8392 奈良市中院町11
TEL/FAX 0742-23-1377 / 0742-23-1378
URL https://gangoji-tera.or.jp/
宗派 真言律宗
拝観時間 09:00~17:00 (入館締切16:30
823日・24日の地蔵会の日は9:0021:00
拝観料 ●拝観料
大人・大学生…500
高校生・中学生…300
小学生…100団体割引(20名以上)
大人・大学生…400円●秋季特別展期間は大人・大学生の拝観料が変更になります。
大人・大学生…600円団体割引(20名以上)
大人・大学生…540円※身障者はそれぞれ半額になります
交通アクセス 最寄り駅からの交通
  JR 奈良駅 徒歩約20
  近鉄 奈良駅 徒歩約12
駐車場 乗用車10(拝観時間内 無料)
大型バス2(予約必要)
8
22日~25日午前中、22日〜3日はご利用いただけません。

(※出典:奈良県観光公式サイト)

※上記テキストは、伊藤みろ著『心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い』(ランダムハウス講談社、2010年)より抜粋しています。